透明な海~恋と夕焼けと~
不安そうな瞳を向けてくる仁科さん。
きっと、女の子の扱いに慣れていないんだろうな。
動作は凄く、エスコートとか上手そうに見えるけど。
「…美音ちゃん?どうしたの?」
「………ッ」
「……これ、使って」
スッとハンカチを渡され、涙声でお礼を言い、受け取った。
仁科さんに似合う、透明な海のような青色。
「ごめんなさい…楽しくて……」
「楽しい?
つまりその涙は、嬉し涙ってことかい?」
「多分…そうだと思います……。
仁科さん、初対面のあたしに…凄く優しいから……」
仁科さんは少しだけ立ち上がり、あたしの頭を撫でた。
ぎこちないけど、凄く優しい撫で方だった。
仁科さんは本当、優しさから出来ているみたい。
「…僕は優しくないよ。
でも、泣いている子は放っておけない。
青春ドラマみたいなことは言えないけれど。
……美音ちゃんが泣き止むまで、僕は待つから」
青春ドラマみたいなことは言えないけれどって仁科さんは言うけれど。
十分、仁科さんは青春ドラマみたいなことを言っているよ。
…ほら。
あたしも、仁科さんの言葉で、笑えるから……。