透明な海~恋と夕焼けと~
笑顔になれる涙
あたしが泣き止んだ頃、仁科さんはあたしに“とあるお願い”をしてきた。
驚いたけど、泊めてくれるお礼としてあたしは了承した。
「…美味しそ~!」
目の前で、二十歳の仁科さんが、小さな子どものような無邪気な笑みと声を漏らしている。
仁科さんの目の前には、あたしの作った肉じゃがが置かれている。
そう。
仁科さんの“とあるお願い”とは。
あたしが作る、肉じゃがが食べたいということだった。
「いただきま~す!」
「いただきます」
瞳をキラキラさせながら肉じゃがを食べて行く仁科さん。
「美味しい!
僕はこんなに美味しい肉じゃがを食べたことがないッ!!」
「…大げさじゃないですか?」
「本当だよ!
僕は嘘なんてつかないッ!!」
あたしも自分で作った肉じゃがを食べた。
…別に、不味いとは思わないけど、そこまで美味しいとも思わない。
別に…どこにでもある食材で作った、どこにでもある肉じゃがだ。
何故こんなにも喜んでくれる?