透明な海~恋と夕焼けと~
無我夢中で肉じゃがを食べて行く仁科さんが可愛くって。
あたしはいつの間にか、さっきまで泣いていたことを忘れて、思い切り笑った。
すると無我夢中で食べていたはずの仁科さんが、不思議そうな顔をしてあたしを見つめた。
「…どうしたんですか?」
「…いや、大したことじゃないんだけどね」
「何ですか?」
「前に聞いたことがあるんだ。
人は泣いた分だけ笑えるって……」
「人は泣いた分だけ笑える…?」
「どうやら本当のようだね。
美音ちゃんを見ていると、そう思えるよ!」
人は泣いた分だけ笑える…。
…確かに、そうなのかもしれない。
さっきまで泣いていたのに、今は思い切り笑っている。
泣いていたのが…嘘のように。
「仁科さん」
「ん?」
「詩人になれますよ」
「………」
仁科さんはプハッと吹き出し、思い切り笑いだした。
太陽が弾けるように楽しそうに笑う仁科さんを見て、あたしも思い切り笑った。
…いつか。
いつか、思い出になるよね。
いつか必ず、基樹との恋にサヨナラ出来るよね……。