透明な海~恋と夕焼けと~
あたしがアイツ―――沢井基樹(さわい・もとき)という一風変わった名前の彼氏に会ったのは、入学式して1週間後のことだった。
学校に慣れ始めた頃。
男女問わず人気のあった基樹は、男友達と廊下でバスケットボールを使って遊んでいた。
ある男子が投げたボールを基樹は受け止めることが出来ず、顔面で見事受け止めたのがあたしだった。
それがきっかけで、基樹とあたしは話すようになった。
あたしは人見知りが激しくて、友達がいなかった。
基樹は初めて、あたしに話しかけてきてくれた人だった。
「おはよう」って話しかけてきてくれて、最後には「バイバイ」と返す。
些細な挨拶から趣味の話まで話の話題は飛んでいた。
そして5月に入った頃。
基樹はあたしに告白してきた。
嬉しかった。
あたしだって告白する勇気がなかっただけで、基樹に惹かれていたんだから。
それなのに。
今日6月1日に、基樹はあたしを振った。
1ヶ月しか付き合っていない。
キスもデートも、何もしていない。
何で?
あたしは基樹のことが好きだったのに。
基樹とずっと一緒にいたいと思っていたのに。
何でよ…。
基樹…どうして、あたしを振ったの?