透明な海~恋と夕焼けと~
第2章
退部
☆美音side☆
「ありがとうございました。
制服の洗濯までしてくれて…」
「気にしないで。
美音ちゃん女の子だから、気にしちゃうでしょ?」
次の日。
あたしはエントランス内で、仁科さんと話していた。
仁科さんはご丁寧に、制服の洗濯をしてくれた。
お蔭で綺麗になって、しかも洗剤の良いにおいがする。
仁科さん、案外家庭的なのかもしれない。
「お世話になりました」
頭を下げると、仁科さんは笑った。
「気にしないで。
僕の方こそ、肉じゃが作ってくれてありがとう。
美味しかったよ」
「もしまた会えたら、肉じゃが作ってあげましょうか?」
冗談のつもりで言ったら、仁科さんはふっと寂しそうな笑みを浮かべた。
その切ない表情に、胸が締め付けられた気分がした。
「…うん。
また会えたら、作ってよ。
まぁ会えることなんてないだろうけど」
「……」
「じゃあ、頑張ってね」
仁科さんがヒラヒラ手を振る。
あたしもお辞儀をして、振り返し、エントランスを出た。