透明な海~恋と夕焼けと~
「基樹!」
「深雪、課題やったか!?」
「やったよ。
もしかして、また基樹は忘れてきたの?」
「そうなんだよー!
見せてくれねーか?」
「しょうがないなー」
…そっか。
基樹の好きな人って、浅居さんなんだ。
そっか…そっか……。
良いよ、浅居さんなら。
浅居さんは学年1可愛いって言われるほど、人気者。
成績も良いし、憧れって感じ。
学年1かっこいいって言われる基樹とは、お似合いだ。
そうだよ。
あたしと付き合うのが不思議だったんだよ。
だってあたしは、浅居さんとは比べ物にならないぐらい、何も取り柄がない。
かっこいい基樹と似合うのは、可愛い浅居さんなんだよ。
基樹はあたしの存在を空気として扱い、浅居さんと校内に入って行った。
浅居さんも美術部だし、付き合っていた頃から何度も話しているのを見ていた。
でも、あたしは何も言わなかった。
基樹に重い女だと見られるのが嫌だったから。
少しでも「あたしのことだけ見て」って我が儘言っていたら。
思い切り基樹を好きでいられたら。
基樹はあたしを振らないでいてくれた?