透明な海~恋と夕焼けと~
実はあたしが基樹と付き合っていたことは、誰も知らない。
告白されたのも、誰もいない美術室だったし。
別れを告げられたのも、誰もいない教室。
部活中は、“仲の良い友達”を装って接していた。
でも本当は、凄く仲の良い、自分で言うのも何だけど、上手く行っていた感じだった。
それが別れちゃうんだから…不思議なものだよね。
「さぁ…わからないや……」
「そっかー」
「あ、浅居さんは沢井くんと付き合っているんでしょ?
浅居さんの方が、知っていると思うけど……」
基樹、と呼ぶのも本人の前だけだった。
基樹の方は恋人とか関係なく、女子は全員下の名前で呼んでいたから、美音って呼ばれていたけど。
基樹、と皆の前で呼んでいたのは、浅居さんだけだったと思う。
「はい?
折坂さん、何言っているの?」
「え?」
「私は基樹と付き合ってなんていないよ。
…まぁ私は?基樹のことが好きだけどネ」
浅居さん、基樹のことが好きなんだ…。
「でも振られちゃった」
「え?」
浅居さんが!?