透明な海~恋と夕焼けと~
あたしはその日の夜。
仁科さんに肉じゃがを作るから、あたしも食べたくて、夜ご飯はイラナイとお母さんにメールをした。
と、その前に。
メールをし終え、作り始めようかなと立ち上がると。
台所にいた仁科さんが、申し訳なさそうな顔をして出てきた。
「ごめん美音ちゃん。
肉じゃがの材料がないんだ。
だから僕買ってくるから、美音ちゃん待ってて」
「えっ!?」
財布などを着ているパーカーのポケットに詰めている仁科さんに向かって、あたしはその手を掴んだ。
驚いている仁科さんを見て、自分の大胆すぎる行動に気が付き、離れた。
「ご、ごめんなさい……」
相変わらず冷たい仁科さんの手を、離した。
「……どうしたのいきなり」
「一緒に…行っても、良いですか?」
「え?
良いよ僕だけで。
美音ちゃんは家にいて良いよ」
「行かせてください……」
離れたくない…。
手は離してしまったけど、離れたくない。
もっともっと、仁科さんの笑顔を見ていたい……。