透明な海~恋と夕焼けと~
「仁科さん」
「ん?」
人通りの少ない所を歩いている時に、前を歩くその背中に問いかけた。
予想通り、仁科さんは立ち止まってあたしを見た。
もしこれが人の多い場所だったら、通る人の迷惑になってしまうから。
だから聞かずに、人通りの少ない所で質問したのだ。
仁科さんは必ず、話す時は話している人の目を見て聞くから。
止まると思ったんだ。
「仁科さんは…何者ですか?」
今更ながら聞いてみると、仁科さんは笑った。
「もうすぐでわかると思うよ」
そのまま歩きだしたので、あたしも歩きだす。
もうすぐでわかる?
どういう意味なのだろうか?
仁科さんのマンションを出てから10分後。
お目当てのスーパーに到着した。
「何が必要かわからないから、美音ちゃん選んで。
僕はお会計だけ済ませるから」
カゴを持ちながら言われ、あたしは急いで首を振った。