透明な海~恋と夕焼けと~
「僕の家、少し複雑で、僕の親は仁科じゃないんだ」
少しだけ寂しそうな笑みを見せた仁科さん。
「そうなんですか…?」
「うん。
僕の義理の父親が、財閥の社長をしているんだ。
沢井財閥って聞いたことない?」
沢井……?
基樹の名字…沢井だ。
「美音ちゃん…?」
「……き」
「え?」
「沢井基樹…知っていますか……」
沢井、なんてよくある名字だ。
だから基樹のことなんて知らない。
――――そう、思っていたのに……。
「美音ちゃん…何でソイツを……知っているんだ…………?」
動揺に満ちた仁科さんの瞳が、全てを語っていた。