透明な海~恋と夕焼けと~
「…………」
暇だったから。
楽そうだったから。
…そんな理由で引き受けてしまったけど。
まさか、
引き受けるんじゃなかったと後悔するときが来るなんてなぁ。
あたしが今いるのは、美術準備室。
美術室の隣にある、物置用の部屋だ。
あたしが浅居さんに頼まれたのは、とある絵を探すこと。
探してほしい絵の作者は、美術部顧問。
昔自分が描いた力作を部員に見せようとしたんだけど、その絵がこの美術準備室に保管されており、探してほしいと浅居さんに頼んだらしい。
顧問の先生は受け持ちのクラスの生徒の親と話す予定があり、任せたらしいけど。
当の浅居さんが、危篤状態のお祖父さんの家に行くことになったみたいで。
そして元だけど美術部員のあたしに頼んできたというわけだ。
目の前に広がるのは、綺麗な仁科さんの家とは正反対なほど、汚い部屋。
物や絵の具、その他の美術関係品が多くて、探すのに時間がかかりそうだ。
…立ち止まっていても、仕方ない。
探さないと、駄目だ。