透明な海~恋と夕焼けと~
あたしは見つかる気配のしないまま、探し始めた。
長らく掃除をしていなかったみたいで、埃も多い。
軍手を両手にはめながら、あたしは作業を続けた。
約1時間後。
あたしはロープに縛られた絵の束を見つけた。
1つ1つのキャンパスに袋がかぶせられていて、あたしは1つ1つ剥がしていくことにした。
キャンパスの下には名前が書かれていた。
【浅居深雪】
あ、浅居さんのだ…。
相変わらず人物画、上手いなぁ。
でも浅居さんは子どもが好きだから、保育士になるって言っていたよね。
【折坂美音】
あ、あたしのだ…。
あたしのは、あの海を描いたもの。
あの海の青さを表現出来なくて、困ったんだよね。
てことはこれ、入部して初めての写生会の時の絵だ。
【沢井基樹】
基樹…。
あたしと同じ、海の絵。
一緒に描きに行ったんだよね。
基樹は風景画が上手いから、海の綺麗な青さも表現出来ていた。
本当…羨ましいや……。