透明な海~恋と夕焼けと~
「てか、何で美音が知っているんだよ」
「仁科さん、絵の天才だったの?」
聞くと、基樹は目を細めた。
その雰囲気は仁科さんに似て…寂しそうな感じだった。
「……そうだよ。
兄貴は、天才だったよ」
「何で絵を描くの、やめてしまったの…?」
「…………」
「基樹ッ……?」
「……俺のせいなんだ」
基樹のせい……?
「兄貴は、俺を庇って……事故にあったんだ」
基樹を庇って……?
「道路の向こう側にいた兄貴に会いたくて…俺は信号を無視して飛び出した。
そこに、大型トラックが来て……。
目が覚めたら、隣に…包帯ぐるぐる巻きの、兄貴がいた……。
俺を庇って事故にあったんだと……聞いた………」
仁科さんと基樹の関係はわかった。
でも、何で…仁科さんは絵を描くのをやめてしまったの?