透明な海~恋と夕焼けと~
基樹は涙を拭うこともせず、話し始めた。
「俺は最悪だよ。
兄貴が、俺を恨む理由もわかる。
俺は…兄貴の、家族も、恋人も、全部奪ったんだ」
家族も、恋人も?
どういうこと……?
「美音」
「何?」
「美音は、兄貴が好きなのか?」
突然聞かれ、すぐには答えられなかった。
でも、強く頷いた。
「あたしは、
仁科さんが好き」
「…なら、兄貴を壊さないでくれ」
「壊す……?」
「兄貴は、凄く弱い人なんだ。
それがバレないよう、いつも笑っているけど。
本当は、支えがないと、すぐに倒れちまうんだ。
美音は、兄貴を支える柱になってほしい。
兄貴を本気で愛している、美音しか出来ない。
俺の予想だけど――――――……」
基樹の予想に、あたしは少しだけ泣いた。
でも、泣いていちゃいけない。
すぐにあたしは涙を拭った。
「ありがとう基樹。
あたし、基樹に出会えて良かった……」
「俺も、美音と付き合えて良かったよ」
あたしは階段を上がり、仁科さんの家へ向かった。