透明な海~恋と夕焼けと~
涙の色
仁科さんの家はオートロックで。
すぐに部屋番号を入力し、仁科さんを呼び寄せた。
『はい?』
「仁科さん!あたしです、折坂美音です」
『美音ちゃん?どうしたの?』
「聞きたいことがあるんです…。
会ってもらえますか……?」
暫く沈黙が続いた。
凄く息苦しいと思った。
『…無理』
返ってきたのは、本当に冷たい言葉だった。
「どうしてですか……?」
『美音ちゃん』
「はい」
『基樹に、会ったでしょ?』
何で仁科さんが……。
『ごめん。
盗み聞きするつもりなんて、なかった。
ただ病院の帰り、たまたま出くわしたんだ』
仁科さんの声は、機械越しでもわかるほど、震えていた。