透明な海~恋と夕焼けと~
あたしは1つ1つ扉を開けて行った。
「…何これ……」
入って第一声がこれだった。
だって、覗いた4つの部屋には全て。
…何も置かれていなかったのだから。
何もない、真っ白な部屋。
何も置かれてない、シンプルすぎる、異様な部屋。
白すぎて、チカチカしてきたほど。
最後は玄関に最も近い、扉。
多分ここに、仁科さんがいる。
でも、頑丈そうな南京錠が扉にはついていて、押しても引いてもビクともしない。
あたしは思い切り、扉を叩いた。
「仁科さん!あたしです!
折坂美音です!!
仁科さんッ!!!」
中からは、音も声も、何も聞こえない。
叫び続けていたけど、次第に声が嗚咽に変わった。
「仁科さんッ…うわああん!」
あたしは子どものように泣き始めた。