透明な海~恋と夕焼けと~
「仁科さんっ…会ってくださいよ……」
あたしは扉につたって、座りこんだ。
「あたし、確かに…基樹に会いました。
基樹と話しました。
でも、好きじゃありません。
基樹に抱いていた感情は、憧れなんです。
あたしが本当に好きなのは……仁科さんです………。
仁科さんへの気持ちは、恋です。
あたし、これが初恋です。
仁科さんが、あたしの初恋の相手なんです。
仁科さん、あたしに会ってください。
それで、お願いです…あたしを抱きしめて……。
仁科さんに抱きしめてほしい…。
仁科さんと、手を繋ぎたい……。
仁科さんと、キスがしたいです………。
我が儘でごめんなさい。
でもあたしには、仁科さんしか愛せない。
笑顔と言う名の鎧で弱さを隠している仁科さんを、あたしが守ってあげたい。
一緒に泣いて、一緒に笑いたいんです……。
弱くて良いんです。
完璧じゃなくて良いんです。
夢を見るのを諦めても良いんです。
強くなくて、良いんです。
でも、あたしの傍にいてほしい。
あたしの傍にいるだけで良い。
あたしのこと、泣き止ますことが出来るのは、仁科さんだけです。
仁科さん以外、あり得ないんです……ッ!」
基樹と別れた時に流した涙の量とは比べ物にならないぐらい、あたしは泣いた。
綺麗なフローリングの床に、涙で出来た水たまりが出来て行く。
ぽた、ぽたと涙のこぼれ落ちる音と、あたしの嗚咽しか聞こえない。
「好きです……」
ぽた、ぽた、
「愛してる……季」
初めて、呼んだ。
「季ッ……!!」