透明な海~恋と夕焼けと~
最終章
色を失った瞬間
☆☆☆
あたしたちは、海辺に来ていた。
あの後、思い切り抱きしめあい、存在を確かめ合い、思い切り泣いたあたしたち。
その時、季が言いだしたのだ。
「海に行きたいんだ」と。
「そこで、僕の全てを話すから」と。
季の希望通り、あたしたちは海に来た。
季が描いた絵のように、綺麗な夕焼けと海があった。
夕焼けは大きくて、初めて見た。
こんな綺麗な夕焼けの時に、海になんて来たことなかったから。
「綺麗…」と夕焼けに目を奪われるあたしとは違い。
季はにこりともせずに、ただ寂しそうに、哀しそうに夕焼けを見つめていた。
その姿を見て、季は本当に海のような人だと思った。
透明で、消えてしまいそうで、でも時に綺麗で。
抱えるモノは、海のように広くて。
「季……?」
あたしはそっと、手を握った。