透明な海~恋と夕焼けと~
引き取り手の見つからないまま、僕は中学を卒業した。
高校入学と同時に、僕は院長の家を出た。
院長からも「早く出て行け」と言われていたし、僕自身も、早く出て行きたかった。
僕は小学校中学校と、いじめられた。
原因は、院長の息子だった。
「アイツは母親に捨てられ、父親も迎えに来ない捨て子だ。
その上、オレの家の居候だ。
オレに逆らえないこと、アイツは知っているから、ストレス発散道具にして良いぞ」
院長の息子でお金持ちだったソイツは、お金を使って友達が沢山いた。
友達、と言う表現は正しくないのかもしれない。
とりまき、と言う方が正しいと僕は思う。
僕はソイツがお金で釣ったとりまきと一緒に、僕をいじめた。
僕はソイツの言う通り、反撃も何もしなかった。
したって無駄ってことが、わかっていたから。
ソイツは僕が何か反撃をすれば、すぐ院長と奥さんに告げ口した。
そうしたら、
「何で反撃したんだ」とか
「どうして大人しくしていない?」などと
罵られるのがわかっていたから。
そうしたら必ず、その日は家から追い出されるか、夕ご飯がなしになるだけ。
僕が悪い。
僕なんて、生まれて来なければ良かったんだ。
そう思うことで、僕は僕自身を保っていた。