透明な海~恋と夕焼けと~
僕は今まで描いてきたから、秘めていた実力を思い切り発揮した。
美術の先生は褒めてくれ、美術部の女の子たちも「上手い!」と騒いでくれた。
照れくさかったけど、僕には最高の褒め言葉だった。
僕は絵の天才少年として、名を高めた。
有名な美大の先生がわざわざ高校まで足を運んで、僕を入学してくれると約束までしてくれた。
未来が僕の描く絵のように、色づいて見えた。
ある日。
3年間離れて暮らしていた院長から、電話が来た。
僕の父親が、見つかったと警察から連絡が来たらしい。
今更会うつもりなんてなかった。
生まれてから18年間僕を見捨てた人だ。
会うつもりなんてなかった。
ただ、僕の家に訪問者があった。
「こんにちは、お兄ちゃん」
「……お兄ちゃん?」
見覚えのない、少年。
「ぼく、沢井基樹。
お兄ちゃんとは、イボキョウダイになるんだよ」
異母兄弟。
母親が違う、僕の弟。
つまりコイツの父親が、僕の父親?