透明な海~恋と夕焼けと~
基樹は僕に手紙を持ってきた。
手紙を書いたのは、基樹と僕の父親。
沢井財閥の社長だった。
そこには、色々なことが書かれていた。
父親は、僕の母親と、学生時代からずっと交際していた。
しかし母親の両親―――僕にとっての祖父母―――は夜の仕事をしていて。
父親は沢井財閥を継ぐ役目があったから、母親とは別れ、財閥の娘であった基樹の母親と結婚したそうだ。
そして基樹の母親が亡くなるまで、僕を迎えに行けなかったんだと書かれていた。
手紙と一緒に、封筒の中には、カードキーとキャッシュカードが入っていた。
今まで迎えに行けなかったお詫びとしてマンションと、働かないでも生きて行けるようキャッシュカードをくれたんだ。
マンションのローンも、キャッシュカードで僕が買ったのも、全て父親が払うと書かれていた。
僕は住んでいたアパートからマンションへ引っ越した。
1人で住むには大きすぎるマンション。
リビングと寝室だけ使うことにし、後は空き部屋とすることにした。
マンションまでの引越しには、基樹もいた。
5歳下の基樹は、僕の引っ越し作業が終わると帰ると言いだした。
僕は送ると言って、基樹と共に家を出た。
基樹の家へ向かう途中。
僕だけ、道路をはさんだ向こう側の道に着いた。
基樹は急いで追いかけてきた。
トラックが近づいていることも知らずに。