透明な海~恋と夕焼けと~







僕は基樹を庇い、事故にあった。

目覚めると、僕は、色を失っていた。




医者によると、事故にあった時、僕は脳を損傷した。

そして、僕の脳内の色覚の部分に、異常が出たんだ。




僕はお見舞いに来た父親と基樹、先生に会わず、ただただ病室でぼんやりしていた。

そしてわけもなく、ひたすら泣いた。




どんな時も、僕を救ってくれた絵。

なのに、色を失ってしまえば、絵なんて描けない。

だって僕には、色が見えないのだから。





僕は夜な夜な病院を抜け出し、まだ完治していない足を引きずりながら、外へ飛び出した。

向かった先は、毎晩毎晩、海。

海へ到着し、僕は思い切り叫んだ。

泣きながら、思い切り叫んだ。




絵を、描けないんだ。

僕はもう、あの夕焼けも、海の色も、何もかも。

見えないんだ。





僕はいつしか、精神科へ通うようになった。

特別に病室の扉は施錠され、夜病室を抜け出さないよう、監視は徹底された。




僕は外へ行けないとわかると、扉の前で思い切り泣いて叫んで、意味の持たない言葉を叫び続けた。







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