透明な海~恋と夕焼けと~
僕の異常な行動がおさまると、僕は退院した。
久しぶりに松葉杖をつきながら学校へ行き、美術部への退部届を出した。
理由のわからぬ顧問は引き止めていたけど、僕は無理だった。
絵なんて、描けるわけなかった。
学校も退学した。
元々美術部に入って思い切り絵が描きたくて入ったんだ。
行く理由が、なくなった。
その上。
僕が付き合っていた子が、基樹と付き合い始めていた。
別に良い。
その子も、同じ美術部員で、一緒の美大に行こうと約束していたんだから。
絵の描けなくなった僕は、一緒になんていられなかった。
ただ何で?
何で基樹なんだ。
僕から家族も、色も、恋人も奪うんだ?
何で。
何で全部、基樹なんだ―――……。
僕はすることもなく、ただ家でひたすらボーッとしていた。
何も見たくないから、カーテンも閉めっぱなし。
父親のくれたキャッシュカードがあるから、働く必要もない。
違う。
僕には、
生きる意味が、ないんだ……。