透明な海~恋と夕焼けと~
でも、正直…二十歳には見えないな。
かっこいいし大人っぽいけど、童顔なんだろうな。
何だか子犬みたいで、二十歳でお酒も煙草もオッケーな人には見えないかも。
でも、知り合って1時間も経っていないような、誰だかわからない人の家に行くほど、あたしは警戒心緩くないからな…。
これでも緩い方だとは言われるけどさぁ。
どうしよう……と迷っていると。
ポツ……と雨が降って来た。
まだ小降りだけど、ますます強くなるだろう。
「ふ、降って来ちゃったじゃん…。
君どうするんだよ」
「…お兄さんの家、ここから近いんですか?」
「え?
まぁ…近いは近いけど」
「じゃああたし、お邪魔しても良いですか?」
「え?良いの?」
「濡れて風邪引きたくないですから……」
どうやらあたしより、彼の方が警戒心が強いらしい。
散々迷っていたけど、「わかった」と頷いた。
しかし納得がいっていないようで、くるくるの髪の毛をくしゃくしゃにしていた。
「おいで!」
彼は簡単にあたしの鞄を持ち、手を引いて走り出した。
驚いたけど、冷たい手に握られ、あたしは走った。