透明な海~恋と夕焼けと~
夕日の沈み始めた海を眺めていると。
…どこからか、ザクザクと砂を踏む音が聞こえた。
「……基樹」
季の声に、あたしたちは離れた。
後ろを振り向くと、基樹が立っていた。
思わず季を見る。
季は、冷たい眼差しをしていた。
やっぱり季の大好きだった絵を奪った基樹が、許せないのかな?
「ごめん、兄貴」
「…本当だよな」
「ごめん……」
「美音のこと、泣かせてんじゃねーよ」
あたしは2つの事に驚いた。
1つ目は、季の口調だ。
いつも自分を“僕”と言い、穏やかな口調の季なのに。
いつもより数百倍も厳しい口調に、あたしは驚いた。
そして2つ目は。
あたしのこと……?
2つ目は驚きと言うより、疑問に近いのかもしれない。