透明な海~恋と夕焼けと~
基樹の背中が見えなくなる頃。
あたしはあることを思い出した。
「季!
悪いんだけど、すぐに戻るから、待ってて!!」
「え?……良いよ、行っておいで」
あたしは基樹の元へ走った。
「どうしたんだよ美音」
「基樹にね、聞きたいことが、あるんだ」
「何?」
「何で美術部、辞めちゃったの……?」
基樹は寂しそうに、ふっと笑った。
そこでようやく気が付く。
あたしが最初、季と基樹を重ねて見ていた理由が。
似ているからだ。
季と基樹の笑顔が。
寂しそうで、何かに耐えるような笑顔が。
だからあたしは、惹かれたのかもしれない。
寂しそうな笑みが、
本物の笑みに変わる瞬間を見てみたいから―――……。