透明な海~恋と夕焼けと~
基樹は笑ってくれた。
さっきの寂しそうな笑みじゃなくて、季のような明るい笑みで。
「ありがとう美音。
本当兄貴は幸せ者だな。
こんなにも美音に愛されているんだから。
兄貴が、羨ましいよ……俺は」
基樹はあたしの頭を撫でた。
恥ずかしくなって何も言えなかったあたしに、いつかしてくれたように。
「俺、美音に出会えて良かった。
これからも…友達で、いてくれるか?」
「当たり前じゃない……」
「兄貴のこと、よろしく頼むな」
「任せて!」
「……俺、まだ進路とか部活に復帰するかわからねーけど。
美音の言葉、参考にするよ」
「基樹なら、季の夢を叶えられるはずだよ!」
「ありがとな、美音」
基樹はあたしの頭をもう1回撫でた。
「じゃあな、美音」
付き合っていた頃。
別れ際、基樹が言ってくれた言葉。
いつも手を振ることしか出来なかったあたしだけど。
「バイバイ、基樹」
あたしも基樹もまた、
新しい恋へと歩みだす。