透明な海~恋と夕焼けと~
泣いた分だけ、幸せになれる
「季っ!」
「お帰り美音」
海辺に相変わらず寂しそうに立っている透明な海のような彼は、あたしを見てふんわりと微笑んだ。
「基樹とちゃんと別れられた?」
「うん。
季のお蔭だよ、ありがとう」
夕日の完全に沈んだ海には、星空が映っていた。
この辺りには何も建物がないので、星空がよく見えるのだ。
綺麗……と思ったのも束の間。
隣にいる彼には、何も見えていないんだと思うと、少し哀しくなった。
でも、彼は何故か嬉しそうに微笑んでいた。
「何でそんなに嬉しそうなの?」
「ん?
僕、美音の隣にいるだけで幸せだからじゃない?」
「…………」
たまに季の口から飛び出す、ふわふわした言葉たちは。
……時にあたしを、赤面させてしまうから、困ったものだ。
しかもこれに悪気とかなく、天然で言っているんだから、タチが悪い。