透明な海~恋と夕焼けと~
「季」
「ん?」
「あたしも…季の隣にいられて、幸せだよ」
「うん」
「季に出会ってから、あたし沢山泣いて、沢山笑ってる」
「うん」
「だからこれからも…えっと……」
「これからも、何かな?」
イタズラっ子みたいな笑顔を浮かべながら、背の高い季はあたしを覗きこむ。
あたしは恥ずかしくなって、季のトレードマークであるくるくるの髪を思い切りワシャワシャしてやった。
「わっ!ちょっ、美音…やめろ!」
「一緒にいてほしいなんて、言えるわけないでしょ馬鹿!」
「……言ってんじゃん」
「え?……ああああー!」
「どっちが馬鹿なんだよ……」
「呆れないでッ!」
季はクスッと笑った。
「本当美音って、可愛いよね。
俺、幸せだわ~」
「……!」
季は普段、自分のことを“僕”と言う。
何で“俺”と言うのだろうか?