透明な海~恋と夕焼けと~








「季」

「ん?」

「あたしも…季の隣にいられて、幸せだよ」

「うん」

「季に出会ってから、あたし沢山泣いて、沢山笑ってる」

「うん」

「だからこれからも…えっと……」

「これからも、何かな?」




イタズラっ子みたいな笑顔を浮かべながら、背の高い季はあたしを覗きこむ。

あたしは恥ずかしくなって、季のトレードマークであるくるくるの髪を思い切りワシャワシャしてやった。




「わっ!ちょっ、美音…やめろ!」

「一緒にいてほしいなんて、言えるわけないでしょ馬鹿!」

「……言ってんじゃん」

「え?……ああああー!」

「どっちが馬鹿なんだよ……」

「呆れないでッ!」



季はクスッと笑った。




「本当美音って、可愛いよね。
俺、幸せだわ~」

「……!」




季は普段、自分のことを“僕”と言う。

何で“俺”と言うのだろうか?







< 88 / 92 >

この作品をシェア

pagetop