透明な海~恋と夕焼けと~
嬉しさの涙
辿り着いたのは、二十歳のお兄さんが住んでいると思えないぐらい、高層マンションだった。
綺麗すぎるエントランス内を眺め、思わず
「凄い……」
と呟いてしまった。
それを聞いていたのか、彼は髪を触りながら、笑った。
さっきの冷たい手とは裏腹に、あったかい笑顔だった。
「そうでもないよ。
さ、行こうか」
彼はあたしの鞄を持ったまま、エレベーターに向かう。
あたしの家もエレベーター付きのマンションだけど、こんな豪華じゃない。
キョロキョロ怪しげに辺りを見渡しながら、あたしは彼について行く。
降りたのは、5階だった。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
扉を開けた彼は、あたしを中へ通してくれる。
「汚いけど、中に入って」
「はい……」
リビングへ通され、キョロキョロ再び辺りを見渡した。