透明な海~恋と夕焼けと~

嬉しさの涙








辿り着いたのは、二十歳のお兄さんが住んでいると思えないぐらい、高層マンションだった。

綺麗すぎるエントランス内を眺め、思わず




「凄い……」




と呟いてしまった。

それを聞いていたのか、彼は髪を触りながら、笑った。

さっきの冷たい手とは裏腹に、あったかい笑顔だった。





「そうでもないよ。
さ、行こうか」




彼はあたしの鞄を持ったまま、エレベーターに向かう。

あたしの家もエレベーター付きのマンションだけど、こんな豪華じゃない。

キョロキョロ怪しげに辺りを見渡しながら、あたしは彼について行く。

降りたのは、5階だった。





「どうぞ」

「ありがとうございます」




扉を開けた彼は、あたしを中へ通してくれる。




「汚いけど、中に入って」

「はい……」




リビングへ通され、キョロキョロ再び辺りを見渡した。







< 9 / 92 >

この作品をシェア

pagetop