死んだなら【短編】
私の質問に、躊躇することなく
無表情でそう言った。
「…じゃあ、キョウのことも、見れる?」
「あぁ」
彼は、静かに頷くと、胸ポケットから手帳を取り出し
ペラペラとめくった後
目の前が、ぐらんと動いた。
両親の姿や、キッチンの場面が消えて
新しく、開放感のある
グラウンドにいた。
キョウは、私の大切な人だった。
キョウは、野球部で、いつも一生懸命で、大好きだった。
今も、もちろん大好き…。
周りを見渡すと
キョウが、部室のそばの片隅で
ひとり、うずくまっていた。
「キョウ…」