こうするしか生きていく術(すべ)がなかったから





しかし、いくら待てども待てども家族は帰って来ない。

次第にお腹が空き、さすがに寂しくなってきた。

もうとっくの昔に日は暮れ、台所を漁るも底を尽き。

真っ暗なリビングに蹲り、早く帰って来てくれることを祈るしかなかった。

「ママー、お腹空いたよ…。パパー、早く帰って来てよ…。玲奈ー、寂しいよ…、遊ぼうよ…」

どんなに願っても、祈っても、帰って来てくれることはなくて。

“捨てられた”

その事実を受け止めるにはあまりにも幼な過ぎて。

現実と向き合いたくなくて。

何日も何日も待った。

もう帰って来てくれることはないとわかっていたはずなのに。

頭では理解出来ていたはずなのに。

心では追い付かなくて。

目の前の現実と向き合うほどの勇気は持ち合わせてなかった。




< 17 / 52 >

この作品をシェア

pagetop