こうするしか生きていく術(すべ)がなかったから




バリーン

「…ッ!」

「お前を見てるとなぁ、あの女を思い出すんだ。お前を捨てた女だよぉ!!」

いままでどんなことでも耐えてきた俺だが、さすがにこれは耐えられなかった。

10歳のガキがその現実を叩きつけられて平気でいれるはずもなく、向き合う勇気も持ち合わせてなかった俺は、産まれて初めて父親に暴力を振るった。

「うわぁ!!」

元々酒ででろんでろんに酔っぱらってた親父は避けきれずもろに顔面に入った。

「ぐおぅぅぅっ!?」

その感覚を俺は今でも忘れることはない。

のちに俺がこっちの世界に入った原因にもなる一発だったのだから。

ともかく、産まれて初めて息子に反抗された親父がそれで済むはずがなかった。

どうも腹の虫がおさまらないようでいつもよりこてんぱんにされた。

しばらく動くことさえできず、第2ラウンドがやってきてもされるがままだった。

でも俺は一発でも父親に反発できたことで満足感がいっぱいだった。


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