こうするしか生きていく術(すべ)がなかったから


「副総長の佐々木原ゆかよ。以後お見知りおきを」

「…………伊集院………つかさだ」

「そんなに警戒なさらないで。傷ついてしまうわ」

当たり前だ。

初対面でいきなり催眠術掛けられた上に危うく自殺しそうになった。

しかも人一倍警戒してきた奴が言う台詞でもないだろう。

「今日から親衛隊長兼専属シェフになったよ。仲間だからうっかり殺さないように注意してね」

「ご安心を。ななが仲間と言い切った以上手は出さないわ」

安心できるかっ!と叫びたかったがここはぐっと我慢する。

どうなってるんだ。ここの連中は。

「但し裏切ったらどうなるか、わかってるでしょうね……?」

「裏切らないよ、つかさは。逃げ出しても地獄の果てまで追い詰めて一生手放さないもん。だからつかさも裏切られる心配しなくていいよ。私と出会った瞬間に永遠を約束されたようなモノだから。ね?」

微笑んでくるイカれた女二人組を交互に見て、やっと俺は悪魔に魂を売ったのだと理解した。




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