こうするしか生きていく術(すべ)がなかったから
俺たちは俺たちだけで生きていく
ガッシャーン
「!?」
「目障りなのよ、消えなさいよ…」
「うわぁああん!!」
「うるさい!!」
ガチャンッ
「あんた達さえいなければ…」
ぐい
「桜!!」
「あんた達なんて死んじまえばいいのよ!!」
ぶん ガチャン
「うわぁああん!!」
「桜!!」
目の前に映るのは地獄絵図。
まだ2歳の桜を乱暴に投げる母親と、酒と煙草の臭い匂いをまとわりつかせ薬物を無我夢中で吸いまくる父親。
そして家具や食器、硝子の破片が飛び散る“元”リビング。
もう跡形もない。
「うわぁああん!!」
「うっせぇ!!黙ってろ!!殺すぞ!!!!」
喚き散らす父親は今まで自分が吸っていた袋を持つと桜に近づいた。
「ほぉら、さくらぁ。気持ちよくなれるお薬だぞぉ?欲しいよなぁ?」
この時の自分達にはその薬がどういったモノなのかを知る術は無く、ただただ両親がこんなに暴れているのはその薬のせいなんだと思っていた。
「うっ…ひっく…ひっく…うわぁああん!」
「うるっさいって言ってるでしょ!?」
ヒステリックに叫ぶ母親は周りが見えていない。
後ろで自分の息子達が刃物を握っていることも、嗤っていることも知らず───。
「…………え?」
最初状況が理解出来なかった母親も自身の身体を貫通しているモノがあれば嫌でも理解する。
“自分は刺されたんだ”と。
理解したってもう遅い。母親の血走った眼はぎょろりと自分の息子を見る。
「……あ……そら……」
目が合った最愛の息子は“にっこり笑って”。
「────やったー!」
無邪気にはしゃいでみせた。
実は最初から計画していたこの一連の出来事。
空は愛する母さんを、そして自分は──。
「ぎゃっ」
優しい父さんを。
しかして三歳という幼い背丈では届く距離はたかが知れている。
足を刺せれば良かった。
立っていられなくなり、倒れたところを何度も刺せばいいのだから。
計画通り膝まずいた母親と父親を俺達は何度も刺した。
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も。
気の済むまで、心底笑いながら。