こうするしか生きていく術(すべ)がなかったから
組織に入った俺は着々と能力を開花させていった。
元から血を見ると血が滾るような高揚感を感じてはいたが、まさかここまでとは誰が予想できただろう。
あまりにも強すぎた為鎖に繋がれた毎日を送り、その過程でなな達を見つけるのはそう時間は掛からなった。
五人揃って“フリークス”と言われ、“檻”の中でも一際エリート集団だと持て囃され。
あまり感情表現は得意じゃないが、浮かれていた。そう、こんなんでも一応浮かれてはいたのだろう。
“檻”にはいくつかの細かいルールがあった。
その中の一つ、“十二歳まで訓練を積むこと”というのが原則としてある。
ただし、下克上を果たした暁にはトップを殺した者が次のトップになれる。
それは“檻”にいても例外じゃない。
トップになるということ、それ即ち“檻”を最短で卒業できるということ。
僅か九歳で当時の上層部を根こそぎ殺し、晴れて自由の身となった俺達五人は必然的に次のトップとなる。
俺はこれから忙しくなることを見越して一先ず自宅へと向かっていた。
トップとなったからにはそう易々とは動けないだろうから。
しかし、家に入った途端に感じられる不穏な気配。
迷わずリビングに行くとまず見えたのが宙に浮かぶ母親のつまさき。
それから首を吊っている両親の姿だった。
小さい子どもにはまず理解出来なかっただろう。
でも俺は理解出来てしまった。
そういう“知識”を蓄えてしまった。
だってこの姿、見たことあるから─────。
テーブルには遺書が残されていた。
水崎家に嵌められ倒産してしまったこと。
莫大な借金を抱え、もう生きていく自信が無いこと。
自分達の保険金で借金や社員達の給料に賄って欲しいこと。
そして最後に。
『ごめんね、ながれ』
グシャ
読み終わった俺は早速行動を開始した。
まず“檻”にいた戸籍がない自分と同じくらいの男の子を殺し、一家心中に見せかけ自宅を焼いた。
ゴウゴウと燃える炎は全てを焼き付くし、舐め尽くしてくれることだろう。
帰る場所が無くなった俺は一旦組織に戻り、『如月ながれ』ではなく、別の名前で余生を謳歌しようとした。
もしも没落した如月家の生き残りがいたと知ったら間違いなく追われ殺されるに違いない。
侮ってはならない。あいつらはやるといったらどんなことをしてでもやり遂げる。
手段は問わないし、それこそ非合法な手でも“結果が良ければ全て良し”。
悟らせるワケにはいかなかった。なんとしてでも。
特に水崎家の人間には。