こうするしか生きていく術(すべ)がなかったから
「如月、ながれくんだね」
いきなり話し掛けてきた成人男性二人組には警戒色も強くする。
「そんなに警戒しなくてもいい。我々は政府の人間だ。君に着いてきて欲しい所がある」
そう言われ高級車に揺られて着いた場所はまさかの国会議事堂。
「我々は君と契約を結びたい」
「……契約?」
「君の噂は聞き及んでいるよ。何でも戦闘狂なんだって?」
「………」
「その力を役立ててみないか」
人の意見を聞かず、勝手に話を進める男。
「君の両親は死んだ。君も世間では死んだことになっている。残念ながら日本では戦争は禁止されているから当分は平和だろう。非核三原則があるからね。ああ、ちょっと難しかったかな。核兵器をもたず、つくらず、もちこませずっていう規則みたいなモノなんだが、子どもにはまだ分からないか。ともかくも日本では戦争は禁止されているが、世界中どこでも紛争や内戦が起きている。君のその戦闘力が必要なんだ」
どこの世界にも金儲けのことしか考えていない汚い大人はいるモノだ。
それが政府ともなれば尚更だろう。
「味方を殺さなければ、敵を何人殺そうともお咎め無しだよ?どう?悪い話じゃないだろう?殺し放題だ」
意気揚々と語る目の前の男が信じられなかった。
危険因子は殺すよりも味方につけとこうという魂胆なんだろう。
断れば俺は殺人罪と反逆罪で死刑だ。
もしかしたら身に覚えのない罪まで捏(でっ)ち上げるかもしれない。
間違いなくやるだろう。この男なら平然と。
与えられた選択肢は一つだった。
「……やります」
返事を聞いた男は満足そうに握手をした。
「賢い君なら言ってくれると信じていたよ」
「………っ」