続 音の生まれる場所(上)
初めて渡したのは、中三の時。私立高校の試験が済んで、ホッとひと息がついた頃ーーー。
「朔、私から…」
いつもの友チョコを渡すような感覚で差し出した。ハルとシンヤと夏芽がいないのを見計らって渡した手作りチョコ。小さな箱に自分でラッピングして、綺麗なリボンをかけた。
朔が一瞬赤面したのを見て、こっちも照れた。
「サンキュー」
いつもと変わらない様子で受け取った朔の気持ちが今なら分かる。ドキドキしながら毎年、思いが伝わるまで渡した本命チョコ。たった二度しか渡せなかったけど、朔が亡くなってからもずっと、作り続けた…。
でも、今年は…。
売り場を眺めて迷う。結局、何も買えずに帰る。
我ながらイヤな気持ちになる。付き合ってる彼に、チョコ一つも買えないなんて…。
本命でもなければ義理でもない相手。友人にも思えなければ、兄弟でもない…。柳さんの時と同じ。寂しさを埋めるだけの人。
自分勝手な理屈。大事にしてもらっているのに…。いろいろ…助けてもらってるのに…。返すものが何もない。チョコすらも買わずにいて、一体何を贈るつもりなのか…。
カサカサと袋の中で鳴る義理チョコ達。バレンタインなんてなければいいのに…と、生まれて初めて思った…。
「朔、私から…」
いつもの友チョコを渡すような感覚で差し出した。ハルとシンヤと夏芽がいないのを見計らって渡した手作りチョコ。小さな箱に自分でラッピングして、綺麗なリボンをかけた。
朔が一瞬赤面したのを見て、こっちも照れた。
「サンキュー」
いつもと変わらない様子で受け取った朔の気持ちが今なら分かる。ドキドキしながら毎年、思いが伝わるまで渡した本命チョコ。たった二度しか渡せなかったけど、朔が亡くなってからもずっと、作り続けた…。
でも、今年は…。
売り場を眺めて迷う。結局、何も買えずに帰る。
我ながらイヤな気持ちになる。付き合ってる彼に、チョコ一つも買えないなんて…。
本命でもなければ義理でもない相手。友人にも思えなければ、兄弟でもない…。柳さんの時と同じ。寂しさを埋めるだけの人。
自分勝手な理屈。大事にしてもらっているのに…。いろいろ…助けてもらってるのに…。返すものが何もない。チョコすらも買わずにいて、一体何を贈るつもりなのか…。
カサカサと袋の中で鳴る義理チョコ達。バレンタインなんてなければいいのに…と、生まれて初めて思った…。