続 音の生まれる場所(上)
順番がまるで逆になってしまった私の出迎えは、その後暫く、楽団の語り草になった。
ハルとシンヤは面白がって、その日のうちに夏芽にメールして、詳細を彼女に語った。
報告を受けて、夏芽は直ぐに電話してきた。言葉の順番よりも、私が一番最初に言った言葉が違うと言って、プリプリ怒っていた。

「『遅い!』って、一喝してやるんだったでしょ!」

電話の向こうで、泣きながら言ってるみたいだった。それを聞きながら、また、涙が零れた。

「…今日はステキな贈り物もらえたね」

嬉しそうな声が聞こえる。

「うん…これまでで一番嬉しい贈り物だったよ…」

紛れもない宝物が戻って来たみたい。手放したくない。もう二度と…。

「坂本さん、定演どうすんの?参加するの?」

ワクワクしながら夏芽が聞く。その答えを、胸を弾ませて言った。

「参加するって!私達と一緒に、音を語りたいって!」
「キャー!やったー‼︎ 」

飛び跳ねる夏芽に合わせて、声が上下する。その姿が、手に取るように分かった。

「私、何があっても必ず聞きに行く!控え室にお邪魔して、坂本さんに直接、喝入れてやる!」

もう決めた!と声を上げる。その夜は嬉し過ぎて、ずっとずっと、夏芽と喋り続けたーー……。
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