これは絶対に恋じゃない
しかも、片岡くんは、私が断れないことをいいことに、
「顔もチョー可愛いし。マジで、タイプ。オレとのこと考えてみてよ」
そう言って、唐突に、私の手をギュッと握ってくる始末。
「…っ」
さすがに、堪えられず、手を振りほどこうとした時、
「ほら。章二、女の子困らせない。凜ちゃん、固まっちゃってるじゃん」
そんな優しげな声が聞こえてくる。
「んだよー、拓海ー、邪魔すんなよな」
「はいはい。でも、相手を困らせるようなことしたらダメだろ。ごめんね、凜ちゃん。コイツ、悪い奴じゃないんだけどさ、すぐ調子のっちゃうタイプで」
「…あ、いえ。だ、大丈夫です」
そして、片岡くんはというと、ちぇっ、と、つまらなさそうに他の席に移動してしまった。
内心、ホッと胸をなで下ろす私。
…よかった、後少し遅かったら。手、ひっぱたくくらいしてたかも…。