砂~限りある時間のなかで~
美咲ちゃんはいないみたい。


ホッとした。


でも、声掛けにくいな。


今は出来るだけ知り合いに会いたくない気分だし、一人になりたい。




そう思っていたけど、深田くんは後ろを向いて目が合ってしまった。



「西宮さんっ」

深田くんは走ってきて、笑顔で呼んでくれた。

「深田くん。」

久しぶりと言うべきなのか、おはようと言うべきなのか分からない。

ただ、言葉が出てこなかった。


「買い物?」

「うっ、うん…。」

「何買うの?」

「ただ見てただけだよ。」


優しく、私を見てくる。

反則だよ。


「今日はいないよ。」

美咲ちゃんのことかな?

「そうみたいだね。」

「ちょっと付き合ってくれないかな?」


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