俺、お前に惚れてんだけど。
確かに……久間君は優しい。
それはあたしも知ってる。
だけどここで素直に頷けるほど、あたしは可愛くない。
「晴斗も色々大変だし、出来れば優しくしてやってよ」
意味深に言う奏太に疑問を感じた。
なぜか悲しそうな瞳を向けられて、言いようのない不安が胸に押し寄せる。
「色々……って?」
何か、あるの?
「中3の時に親が離婚して母親についてったんだけど、金銭的に苦しいみたいで。親に負担かけないようにって、私立の高校進学諦めて志帆と同じ公立にしたんだよ」
「えっ……?」
親が離婚……?
金銭的に苦しい……?
私立の高校進学を諦めた……?
「うそ」
だって、そんな素振り全然見せなかったじゃん。
いつもいつも、あたしをからかって楽しんで……。
奏太と同じ高校に進学しなかったのは、あたしと同じ高校に通いたかったからだって言ってたけど……。
本当は違ったんだ?
「晴斗の奴朝は新聞配達して、高校に入ってからは、ファミレスで遅くまでバイトしてるって言ってた」
「うそ。そんなことひとことも……」
そこまで言って黙り込む。
ううん、あたしが聞こうとしていなかったんだ。
からかって来る久間君から逃げて、煩わしく思っていた。
いつもいつも、大胆不適で俺様で強引で。
そんな久間君の姿しか知らなかったから、自然と避けてしまっていた。