俺、お前に惚れてんだけど。
「おかえり〜、志帆」
杏がニコッと笑ってあたしを見る。
「志帆ったら、どこ行ってたの?遅かったわね」
お母さんが呆れたように言って、キッチンから顔を出す。
夕飯を作っている途中だったらしく、杏と一緒にキッチンに立っていた。
「ちょっとね。それより!!杏〜……っ!」
キッチンに立つ杏の背中にギュッと抱きついた。
杏を見たら一気に涙腺が緩んで、涙がポロポロこぼれ落ちた。
さっきの光景が頭から離れない。
早苗さんの高らかな笑い声が耳の奥にこだまする。
もう、やだ。
「う〜っ……くっ」
「もー、志帆ったらどうしたの〜?あたしに会えてそんなに嬉しい?」
「うん……っうん……っ杏〜……っ」
泣いてる理由をお母さんに知られたくなくて、そういうことにしておいた。