私の弟がヤンデレ過ぎて困る。
学校の図書室。いつも私が、部活がある弟を待つ時に使用する場所だ。
窓から夕陽が射し込んで、白いカーテンに乱反射する。
私は、図書室でいつも奥のテーブルで、本を読んだり、勉強したりしている。
放課後、周りには誰もいないのか、といってもそうでは無くて、それなりに人はいる。
教科書とノートを広げて、勉強している男子。友達と雑談している女子。図書委員の子。図書司書さん。恋愛小説を借りてる女子。など、さまざま。
図書室に入ってくる人達を観察するのも、楽しいけれど、やっぱりお目当てはこの空間だ。
居やすくて、とても心地の良い空間。
私は、そこで過ごすのが一つの癒しになっている。
勉強していた教科書とノートを閉じて、隣にある本を読む。
ジャンルはなんでもいい。
どんな本でも読んで、楽しめたらそれで良いのだ。
時計を見ると、5時30分。
弟の部活が終わるまで、後30分。
弟の所属している剣道部は、他の部活と比べて、練習量が半端なく多い。
それは、この学校が一番力を入れている部活で全国制覇をしている強豪校だからだ。
中でも、私の弟ニノマイ ショウは若くして剣道5段で高校2年生で部の大将を努めている。
【現代の猛将】とスポーツ誌で取り上げられる程有名で、弟目当てに入学してくる女子もいるくらいだ。
弟は、モテる。
女子から、ラブレターだっていっぱい貰っているし、告白だってされた事がある。
けれども、弟は彼女をつくらなかった。告白も全て断り、ラブレターだってガン無視だろう。
前に、私が廊下で歩いていると、1年の女子に囲まれ、
「なんで、ショウくんから返事がこないんですかッ!?」
と泣かれた始末。
いやいや、そんなこと、私に言われても。
結局、彼女がどうなったのかは、知らない。おそらく、弟に無視され続けているのだろう。
だからといって、私の方に火の粉が降りかかってくるのは御免こうむる。
弟も、もっと穏便に返事を返せないのかなぁと思いながら。
気がつけば、6時になる5分前を針が指していた。
本を閉じて、元の場所に戻す。
そろそろ、弟が来る時間だ。
息急き切って、走ってくる音が聞こえる。
図書室の扉を開けて、早足で私の席に向かってくる。
「終わったよ。おねぇちゃん。」
満面の笑みで、私に微笑む。
制汗剤の匂いがした。
私が好きだと言った、匂いだ。
待った?と弟が聞いた。
『いや、待ってないよ。早かったね。』
「おねぇちゃんが、待ってると思ったから…その、頑張ってきちゃった。」
褒めて、誉めてと頭を出す弟。
私は弟の頭を撫でる。
時計の針が6時になった。