私の弟がヤンデレ過ぎて困る。
外道ヤンキー 河原 文。
次の日の朝。
いつも通りに、弟と一緒に学校に登校していると、学校の前で人だかりが出来ているのが分かった。
なんだろうと、疑問に思っていると、いきなり人だかりが、二つに割れて、何かが飛んできた。
『危ない!おねぇちゃん!!』
弟が必死になって、私を庇う。
弟が、私を庇ってくれた為、飛んできたなにかを私は避ける事が出来た。
そのなにかは、弟の腕に当たり、鈍い音をたてて、地面に落ちた。
捻れ歪んだ、鉄パイプだった。
『ショウ!…大丈夫!?』
私は弟に駆け寄り、弟の腕を確認した。
先刻の衝撃でもし、腕が折れていたら、どうしょう。
ばく、ばく、ばくと心臓が早鐘をうつ。
「大丈夫、だよ。おねぇちゃん。」
弟は、自分の腕を押さえながら、大丈夫と笑った。痛みに、顔が歪んでいるのが分かる。
「…チッ、当たったか。」
聞き覚えのない、男の声がした。
声がする方に視線を向けると、自分の通っている学校と同じ制服を着た、金髪で耳にピアスを空けた、男子が混乱する生徒達が割った道から近付いて来ていた。
他校の制服を着た、男子生徒を引きずりながら。
「ひ、ヒィッ、や、やめッ、ああ」
殴られたのか、鼻から血が出ている男子が恐怖で顔を引きつらせながら、許しを乞い願っている。
「あ″?テメーが、朝っぱらから俺に突っかかってきたんだろうが。ちゃんとオトシマエぐらいつけろ。」
「だ、だから…何度もあやまって…」
「…なに、お前。謝って全て済むとか思ってやがんのか?マジうける。」
金髪の男子は、加虐的な笑みを浮かべて、男子生徒の胸ぐらを掴む。
そして、私とショウのいる所に、男子生徒を放り投げた。
ぐちゃり、と鈍い音がした。
「ソイツ、どうオトシマエつけてもかまわねぇから。最悪、ぶっ殺したってかまわねーよ。」
それだけ、言うと彼は、背中を向け、歩いていった。
私のもとに放り出された男子生徒は、しばらく私の方を見て怯えていたが、すぐに体勢を整えて、逃げていった。
…なんて、DQNなんだ。
その後は、誰かが先生を呼びに行ったのか、大勢の先生達が私の所に来た。
周りの生徒が、先生達から事情を聞かれていたが、誰も答えなかった。
恐らく、みんな…あの金髪の男子の事が恐ろしいのだろう。
ショウは、保健室に運ばれて、手当てを受けた。幸い、骨には異常はなかった。だが、腕は鬱血し腫れ上がっていた。
全治3週間。
その間、部活は大事をとって、休む事になった。
剣道部の顧問の高松先生は、
うちのエースがあァァァァァァ!!?
と絶望していた。
私は、後からクラスメイトに、金髪の男子はあの【河原】君だと知らされた。