私の弟がヤンデレ過ぎて困る。
「…は…によって、…となり、また」
三時間目の授業。
今日は、政治の司先生だ。
眼鏡をしたお爺ちゃん先生で、ちょっと気の弱そうな先生だ。
だが、生徒からの信頼は高く、あだ名で呼ばれている程、通称つかっち。
私は呼ばないが。
別に、司先生の授業は嫌いじゃない。
要点を分かりやすく教えてくれるし、
なにより、頭に入ってくる授業だ。
テストの点数もそこそこ良いので、嫌いではない。
だが、なんか今日の授業は違う。
教室内の雰囲気が、重く暗くなっているのだ。
原因は嫌な程、分かっている。
私の隣の窓側の席に座っている、
【河原】君だ。
イヤホンを耳につけて、音楽を聴きながら、雑誌を読んでいる。机に長い脚を乗せながら。
…あの、音漏れしてるし、何読んでるか気になるし、なにより、机に脚乗せたら駄目でしょ。
と、皆思っているが、言えない。
注意したら、どうなるか分かっているからだ。たぶん、お命頂戴されるだろう。
普通のヤンキー生徒なら、こうにはならない。河原君みたいな格好で、授業に参加していても、こんな雰囲気にはならない。
皆は、「あぁ、ああいう生き方もあるよね。」と生暖かい目で見るか、無視して、授業に没頭するかだ。
でも、河原君は違う。
河原君は、全身から殺気を放っているのだ。
その雰囲気が、教室の空気を淀ませているのだろう。
ふと、司先生が横目で河原君を見た。
横目で、頻繁にチラチラと河原君の様子を確認している。
そして、深呼吸をすると、緊張した面持ちで河原君の所にやってきた。
まさか。
皆、そう思っていたと思う。
クラスメイト全員の視線が、司先生を追ってたから。
そして、事件は始まった。