私の弟がヤンデレ過ぎて困る。


私は、昼休みに急いで飛ばした階段を、重たい脚を引きずるようにして、登っていく。


河原君のいる、今は使われなくなった、四階の東の応接室に向かう為に。


居場所は学級委員長から聞いた。





何故、私が行かなければいけないのか。という疑問を投げ掛けたが、彼曰く、

「河原君とまともに会話したのは、クラスの中でもニノマイさんだけだから」

というもの。





要するに直訳すると、

「俺、河原と関わりたくないんで、隣の席のなんか話した事ないけどニノマイっていう、お前、なんか逝ってこいよ。」

である。


隣の席というだけで、白羽の矢が心臓に当てられ、貫通した私はいったい何処に、このやり場のない叫びを持っていけば良いんでしょうか?


とは、言っても仕方の無い事だ。

どのみち、誰かが河原君に届けなければ、いけないのだから。




と自分で、言い聞かせてはみるが、上手くいかない。


自分の階段の上がる音だけが響く。



やがて、廊下につき、東側の通路の暗い廊下を抜けて、一番奥の応接室につく。




封筒だけ、渡して帰ろう。

ショウは、掃除の担当だし、掃除が終わる迄は、ショウは迎えにはこない。


なるべく、速く済ませて、今日は私からショウを迎えに行ってあげよう。



怪我の事も、あるし。



深く深く深呼吸をして、ドアノブに手をかける。


厭な音を立てて、開く扉に恐怖感を煽られながらも、恐る恐る開く。






大きい窓から、放課後の夕日の光が射し込まれている室内。

高級感のあるソファーが3つと、大きい机が2つ。


使われなくなった室内にも、関わらず埃が一つすらない綺麗な床。


その部屋の中央にある黒色の大きなソファーに寄りかかって、携帯を弄っている。金髪の男。

夕日の光によって、金髪が輝き、とても綺麗に見える。


だが、入ってきた私を一瞥する彼の眼は、攻撃的で恐ろしいものだった。



「あ″?なんだ、お前。」

彼の空間に入ってきた、異端者を侮蔑するかのように。
< 22 / 40 >

この作品をシェア

pagetop