私の弟がヤンデレ過ぎて困る。
私は、昼休みに急いで飛ばした階段を、重たい脚を引きずるようにして、登っていく。
河原君のいる、今は使われなくなった、四階の東の応接室に向かう為に。
居場所は学級委員長から聞いた。
何故、私が行かなければいけないのか。という疑問を投げ掛けたが、彼曰く、
「河原君とまともに会話したのは、クラスの中でもニノマイさんだけだから」
というもの。
要するに直訳すると、
「俺、河原と関わりたくないんで、隣の席のなんか話した事ないけどニノマイっていう、お前、なんか逝ってこいよ。」
である。
隣の席というだけで、白羽の矢が心臓に当てられ、貫通した私はいったい何処に、このやり場のない叫びを持っていけば良いんでしょうか?
とは、言っても仕方の無い事だ。
どのみち、誰かが河原君に届けなければ、いけないのだから。
と自分で、言い聞かせてはみるが、上手くいかない。
自分の階段の上がる音だけが響く。
やがて、廊下につき、東側の通路の暗い廊下を抜けて、一番奥の応接室につく。
封筒だけ、渡して帰ろう。
ショウは、掃除の担当だし、掃除が終わる迄は、ショウは迎えにはこない。
なるべく、速く済ませて、今日は私からショウを迎えに行ってあげよう。
怪我の事も、あるし。
深く深く深呼吸をして、ドアノブに手をかける。
厭な音を立てて、開く扉に恐怖感を煽られながらも、恐る恐る開く。
大きい窓から、放課後の夕日の光が射し込まれている室内。
高級感のあるソファーが3つと、大きい机が2つ。
使われなくなった室内にも、関わらず埃が一つすらない綺麗な床。
その部屋の中央にある黒色の大きなソファーに寄りかかって、携帯を弄っている。金髪の男。
夕日の光によって、金髪が輝き、とても綺麗に見える。
だが、入ってきた私を一瞥する彼の眼は、攻撃的で恐ろしいものだった。
「あ″?なんだ、お前。」
彼の空間に入ってきた、異端者を侮蔑するかのように。