私の弟がヤンデレ過ぎて困る。
一心不乱に鳳先生の鬼畜ドリルを解いていく。まだ、11ページ。
あと、89ページ。
あ、死んだわ。これ。
昨日は、色んな事が起こりすぎて、鳳先生の鬼畜ドリルの存在を忘れて、焼き肉食べて寝てしまったんだった。
どうしよう。挽回の余地が無い。
きっと、鳳先生は許してくれないだろう。冷ややかな目で一瞥されて、また宿題増やされるんだろうな。
焦る私の隣で、河原君はこれまで以上見た事も無い殺気を放っている。
隣にいる私ですら、胃が痛い程。
教室に入ってくるクラスメイト達は、教室に入る前は、笑顔が溢れ、おはようと爽やかに入って来たのだが、教室に入ると死んだように何も話さないし、席から一歩も動かない。
それぐらい、河原君が怖いのだろう。
私も、ある意味だけど。
河原君は、苛々しながらイヤホンで音楽を聴いて、気を紛らわしているようだ。
私は、ドリルを解くのに必死だったが、通常よりも、速く頭を稼働させている為、少し疲れてきてはいた。
河原君の姿を見て、このままで授業を受けたら、また昨日の様になるんじゃないか。と思い、また、るいちゃんが来る前に、この空気をどうにかしたいと考えて、隣の河原君のイヤホンを片方外して、話しかけた。
「あ″?」
河原君が、敵意丸出しで私の顔を見る。
『河原君。なんか、買ってこようか?購買は開いてないけど、自動販売機の飲み物ぐらいなら、買えるから。』
私の言葉を聴いた河原君は、信じられないくらいに目を見開いて、驚いた。
そして、ニヤリと普段の悪人面に戻ると、メモ帳を出して、指定する飲み物を書いて、私に渡した。
「間違えんなよ。ニノマイちゃん。」
『うん。分かった。あ、お金は入らないから、私が勝手にした事だし。』
すると、河原君は、関心したように、流石パシりだ。というような顔をして、私を見送った。
私が教室を出るまで、河原君は、私から目を離さなかった。
普段の悪人面とは違う、彼らしい瞳で、私を見送っていた。