堕ちるのに一秒もかからない


『あっ!!!!』

それから、少したわいもない話をしていたら突然綾花が声をあげた。

『おにぃに、先帰らないで楽屋に来いって言われてたの忘れてた!』

『えー!駄目じゃん!』

『ちょ、携帯!………わっ。やっば。怒られる。』

ばっと見せてきた着信履歴はおにぃの文字。


『あー、どうする?戻る?』

『いや電話をっ❮.•*¨*•.¸¸♬❯ピッ もしもし…』

電話の向こうから大きな声が聞こえる。

というか、漏れてる?

時々、ごめんだとかすいませんとか相槌をうってるけどどう見ても適当極まりない。

いつもこんなのなのかなぁ?

ハルさんって、シスコンなんだなー。

すっごく心配してくれるお兄さんなんて素敵だなー。

『なに、ニヤニヤしてんの?』

いつの間にか電話の終わった綾花が私の顔をのぞき込むようにして見てる。

『な、なんでもないよっ!そ、それよりハルさんなんて?』

『あー、それが迎えに行くから待ってろだってー。』

『へー…え!?ここに来るの!だめだよ!会えない!こんな汗臭いのに!』

無理だってば!

恥ずかしいし!メイク落ちちゃってるし!

『いや、もうすぐくるから、我慢しなさーい!』

ギュッと裾を掴まれて逃げれない。







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