ド天然!? 魔女っ子の秘密【2】
兄は自分が未来を選んだことを後押してくれた祖母と両親の死に目に顔を合わせず、葬式にもこなかった。
どれだけ城での仕事が大変か、理解しているつもりだった。
それでも理解だけでは心は騙せない。納得できない。
何か理由をつけてだって、兄は来るべきだった。
実際来ることができたはずなんだ。
一生に一度しかない大切な肉親との最期のお別れを、兄はあえてしなかった。
晴人は俯いて苦しそうな顔をしていた。おそらくは痛いところを突かれたと思っているのだろう。
だからと言って兄のこの表情を見て気分が晴れるだとか、そういう気持ちにはならなかった。
兄がずっと後悔しているだろうことは薄々思っていた。
兄は優しいから。
だからこそ俺は恨む。
どうしてあの日、あの場に来なかったんだと。
兄は俯いたまま話し出した。紡ぎだす声は掠れていた。
「…悪かったと思ってる。
お前の将来を奪ったことも、先代、両親に最期の別れもできなかったことも。
それでも俺はここで働くと決めたから」
「知っているだろう」と兄は言う。
「柏木家は代々王家に仕えてきた。兄弟のうち一人は必ず城で王家に仕えなければならない」
聞いたことのある話だった。
俺達の家、柏木家の定め。
それは家業が魔物退治屋"サファイア"だけでなく、王家に仕えなければならないこと。
「城に仕えたら、家には帰れない。何があっても王家を守る、それが定めだから」